声明「データスペース等に関する国際標準化の必要性」

2025年3月5日
一般社団法人データ社会推進協議会
デジタル政策フォーラム
一般社団法人デジタルトラスト協議会

 DSA、JDTF及びDPFJの3つの団体は2024年10月に共同提言「データガバナンス戦略の推進」を策定・公表した[1]。同時期、経団連も提言「産業データスペースの構築に向けて」を公表した[2]。これらの提言を踏まえ、経団連を中心に関係府省のご協力を得ながら、データスペースの構築に向けた官民連携のあり方等について検討が進められている。

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(1) 基本スタンス

 我々は、データスペースが「ガバナンスフレームワークによって定義された共通のポリシーとルールを持つ分散型エコシステムであり、信頼とデータ主権を維持しながら、参加者間の安全で信頼性の高いデータ取引を可能にする」という現時点でのIOFDS(International Open Forum on Data Society)の定義を支持しつつ、上記の議論に参加するに際して、以下の3点を基本スタンスとしている。

1. データスペースは多様な形態で進化していくと考えられることから、分散型データスペースとクラウドベースのデータスペースのいずれにも対応可能なデータスペースの枠組みを構築し、特に経済安全保障の観点からデータ主権が確保されたものであること。

2. データスペースのユースケースを展開していく中で参照されるべき共通枠組み(ガバナンスフレームワーク)として、下記の3層構造を念頭に置くこと。
 
 A) トラストサービス層(電子署名/eシール/タイムスタンプ/eデリバリー等の機能)
 B) データ連携層(データを連結するコネクター等の機能)
 C) アプリサービス層(データ連携のための様々なコミュニティ)

3. データスペースの用途として、サプライチェーンにおけるデータ連携等の産業データスペースと、地域の活性化に貢献する地方創生データスペースの2つの類型を念頭に置きつつ、各データスペースが連携可能な相互運用性(オープン性)が確保されたものであること。
また、データスペースに係る具体的な検討項目としては、下記の5項目が特に重要であると認識している。

 ●データスペースに係る共通枠組みの策定
 ●機能要件・保証要件の策定(データ連携層とトラストサービス層の間の相互運用性と具備すべき機能要件・保証(assurance)要件の確定)
 ●国際標準化の推進(国際標準化組織としてISO/IEC/IEEE/IETF/W3Cなどを想定)
 ●トラストサービス法の検討
 ●データ流通促進法の検討

上記5項目のうち、特に国際標準化の推進について我々の基本的立場は以下の通りである。

[1]DPFJ、DSA、JDTF3団体による共同提言「データガバナンス戦略の推進」を発表https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000131931.html
[2]産業データスペースの構築に向けてhttps://www.keidanren.or.jp/policy/2024/073.html

(2) データスペースに関する国際標準化

 欧州のGaia-X が示すデータスペースについて、一定の品質やレベルを認定する取り組みは、今後の実装において重要な取り組みであると認められる。
しかしながら、これを国際間で共通の指標や評価基準とするのであれば、それは国際間の合意により国際標準化組織において基本的事項を定めることが望ましい。この類の認証基準は、持続的な運用と更新が必須であり、国際間で合意とガバナンスのもとでこれを行うべきである。

 この点、Gaia-Xの提案は、建設的であり先行的取り組みとして評価・尊重はするものの、ガバナンスという意味ではその意思決定権者が欧州企業に限定されることは、日本として憂慮すべきことと考えている。
以上に鑑み、我々はデータスペースの認定については、国際標準化または国際的な連携(IOFDS[3]など)の枠組みの中で制定を協議していきたいと考えている。

[3]International Open Forum on Data Societyhttps://iofds.org/

(3) トラストサービスに関する国際標準化

 データスペースにおける共通的なトラスト検証環境としてのトラストサービスについては、相互運用性を確保していくため、機能要件・保証要件等の国際標準化を進めて行くことが必要である。具体的には、データスペースの実現を支える基盤であるトラストサービスについて、日本においても、電子署名、タイムスタンプ、eシール、ウェブサイト認証、モノ認証、eデリバリーなどの仕組みを包括的に機能させるための仕組みが必要である。しかし、こうしたトラストサービスを構成する要素について、現時点では電子署名のように個別法で制度化されていたり、タイムスタンプのように個別の大臣告示によって制度化されているなどの状況にある。しかし、各トラストサービスを横断する共通の認証基準などが必要であること等に鑑みれば、包括的なトラストサービス法の制定が必要であると我々は考えている。

 こうした制度化を進めていくためには、トラストサービス法の制定に際してEU等との相互運用性を確保するよう努めると共に、国際的な相互運用性を確保する観点から欧州との間で相互認証(日欧の個人情報保護法に係る相互認証が参照例となる)を実現するための議論を行うとともに、これらの議論も踏まえつつ、国際的な相互運用性と安定的なガバナンスを確保する観点から国際標準化組織における国際標準化の動きを同時並行的に進めていく必要があると考えている。


一般社団法人データ社会推進協議会/DSA
2021年4月設立。産学官の連携により分野を越えた公正、自由なデータ流通と利活用による豊かな社会(データ社会)を実現し、国内はもとより世界と連携し貢献を図ることを目的として、データ社会を実現する連携サービス(DATA-EX)の提供の実現等に向けた活動を行っている。
デジタル政策フォーラム/DPFJ
2021年9月設立。デジタル政策をテーマとする熟議プラットフォーム。産学官の枠を越え、多様な専門家が緩やかに連携するコミュニティを形成しており、広くデジタル政策に関する骨太な議論を行いタイムリーな提言を行っている。なお、本フォーラムの事務局は一般財団法人デジタル政策財団が務めている。
一般社団法人デジタルトラスト協議会/JDTF
2022年2月設立。信頼性のある自由なデータ流通(DFFT: Data Free Flow with Trust)の実現に向けて、民間企業を中心とした利用者視点でのデジタルトラストの社会実装(トラスト基盤TaaS: Trust as a Serviceの創設)・課題整理・政府への提言などを行っている。